
借地人が借地権を第三者に譲渡しようとする場合において、借地権が第三者に移転しても地主に不利となるおそれがないにもかかわらず、地主がそれを承諾しないときは、裁判所は、借地人の申立てにより、地主の承諾に代わる許可を与えることができます。
借地は、借家の場合と比べて、目的物の利用の仕方が人によって大きく異なる訳ではありません(建物を建てて居住する、営業するだけ)。そこで、借地権が譲受人に移転しても地主に不利がないかどうかを裁判所が審査し、問題がなければ地主の承諾に代わる許可を与えることが認められています。
譲渡許可の裁判は、「この人に借地権を売りたいから許可してください」という手続なので、借地権の買受予定者が決まっていることが必要です。買受予定者が決まっていない場合、この制度を利用することはできません。
借地人が譲渡許可の申立てをすると、裁判所が審問期日を指定し借地人と地主を呼び出します。審問期日では裁判所が双方から事情を聴取し、双方の言い分が出揃ったところで、和解を打診するのが通常です。和解の見込みがないときは、不動産鑑定士等による鑑定を経て、譲渡を許可するか否かの裁判をします。終結までに要する期間は、早期に和解が成立すれば6か月、鑑定を経て決定に至る場合は1年から1年半ほど要する場合が多いように思います。
裁判所が譲渡を許可する場合でも、譲渡承諾料の支払は必要です。
許可の裁判は「申立人が相手方に金●●円を支払うことを条件として、賃借権を●●に譲渡することを許可する。」という形で出されます。
譲渡許可の裁判で審理される場合、譲渡承諾料は借地権価格の10%相当額を原則とし、そのケース特有の事情を踏まえて増減(概ね5%から15%)して決定する扱いです(東京地裁民事22部の運用)。
譲渡許可の裁判は、「この買受予定者に借地権が移転すると地主に不利となるおそれがあるか否か」を審理する手続ですから、買受予定者の信用性、とりわけ経済的な信用性(地代を継続的に支払っていく資力があるか)が重要な審理対象です。
そのため、買受予定者の資力を証明する資料として、法人であれば納税申告書や計算書類(貸借対照表と損益計算書)、個人であれば納税申告書や源泉徴収票の提出を求めるのが裁判所の扱いです。
ただでさえ地主との交渉が難航して裁判沙汰になっている借地権を購入しようという人や企業は少数派です。その上、許可が得られるか否かわからないのに、非常にセンシティブな計算書類等の提出を求められるとなると、買受予定者にとっては結構高いハードルとなります。
私の経験上も、いったんは買受の意向を示してくれた不動産事業者の方でも、譲渡許可の申立てをするとなると協力を断られたことが何度かあります。
譲渡許可の裁判に最後まで協力してくれる買主を探すのは難しい。
上記のように、譲渡許可の裁判で許可が得られるまでには半年から1年半程度の期間を要します。買受予定者は、許可が得られるか否か分からないのに長期間待たされ、外部に余り見せることのない計算書類の提出まで求められます。こうしたことに協力してくれる買受予定者は多くなく、特殊な不動産事業者の方が中心になります。そのため借地権の譲渡価格は大幅に下がり、適正価格(実勢価格×借地権割合)の1割程度が一般的です。
これにはやむを得ない部分もあります。不動産事業者は転売や分譲で利益を上げるために物件を購入します。借地権を転売するとなると、購入した事業者は、転売に際して、改めてもう一度譲渡許可の裁判を行わなければなりません。そうした手間とコスト、転売の見通しの不確実性などを考えると、とても高い金額は出せないという判断になるのもうなづけます。
このように、借地権譲渡許可の裁判をする前提だと、協力してくれる買受予定者を見つけるのが難しく、譲渡価格が大幅に下がります。譲渡価格を重視するのであれば裁判所の手続の利用は避け、かなり譲ってでも地主さんの承諾を取り付けた方がよいと思います。
他方、個人名義の借地権を同族で経営している企業に譲渡するとか、知人の不動産事業者に譲渡するなど、経済的利益を度外視して協力してくれる見通しが立つ場合、譲渡許可の裁判は効果的です。特に地主の提示する譲渡承諾料が不当に高額な場合、譲渡許可の裁判によった方が承諾料の額が下がるメリットがあります。某裁判所担当部の運用基準では、同族企業への譲渡する場合の譲渡承諾料は、借地権価格の10%から若干減額(8%から9%)する扱いとなっています。
借地権を同族企業や知人などへ譲渡する場合、譲渡許可の裁判が効果的な場合がある。
平成21年2月、ここ自由が丘に事務所を開設して以来、相続・遺産分割、借地権や底地の問題、様々な契約交渉の代行やアドバイス業務に取り組んでまいりました。
トラブルの解決は簡単ではなく、依頼者の方にご満足いただける結果を出せないこともありますが、どんな案件でも、時間をかけ、頭が曲がるくらい必死に考える、これだけは忘れないようにしています。
相続や遺産分割、借地権や底地の問題、契約の問題などでお悩みの方がおられましたら、当事務所の法律相談のご利用をご検討ください。
弁護士 大江 真人
昭和45年生まれ
平成5年3月 青山学院大学法学部卒業
複数の民間企業を経て、平成20年9月、司法研修所修了(旧61期)、弁護士登録
東京弁護士会(登録番号:37691)
夫の遺産について、夫の兄弟との遺産分割協議をお願いしました。夫の兄弟から理不尽な要求をされ、大変悔しい思いをしましたが、先生には最終的には納得できる内容でまとめて頂き、感謝しております。
借地権の処分でお世話になりました。予め説明を受けていたとおり、私の希望通りの解決とはなりませんでしたが、依頼してよかったです。良い情報も悪い情報もマメに知らせてくれるので、納得して受け入れることができました。
契約書類の作成やレビューを継続的にお願いしています。取引先から渡されるドラフトのどこに問題があるかだけでなく、取引先との関係を壊さないようにクリアするにはどうすればよいかを一緒に考えてくれるので、助かっています。
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